第238回 取引所はずるい

ニッケル相場で守られなかった投資家の利益

取引所はずるいです。ニッケルの価格高騰期にそれがよく現れています。今日はこちらの話をいたします。

まずは、図表1を見て下さい。ニッケルの主要市場であるLME(ロンドン金属取引所)は、2022年3月8日から一週間取引を停止しました。さらに、8日に成立した取引をすべて無効にしました。図表1では7日の次の取引日は16日となっています。利益が出ていた投資家たちは激怒し、話題になりました。

問題は、停止直前の3月8日に成立した取引をすべて無効にしたことでした。このため、8日の取引で利益が出ていた投資家たちは激怒しました。自由経済の仕組みの中ではありえない行為だからです。

また、ローソク足では一本値が22日まで続いています。LMEでは取引再開時、1日あたりの値下げ制限を設けました。そのため、大量の売り注文が入り、買い注文が少ないと、価格は下がっていき、その日の最低価格で取引が成立します。そのため、ローソク足が一本値になっています。

ニッケルの急高騰

図表2にニッケルの価格チャートをつけました。2022年、折れ線グラフの値が突出して高いところが3月です。大幅上昇していることがわかるでしょう。あまりの高騰が取引停止の引き金となりました。

さて、当時のニッケルの主要生産国を見てみると、上から順にインドネシア、フィリピン、ロシアとなります。図表3です。ポイントはロシアです。一般のニッケルは生産量約7%で、世界3位のシェアを占めていました。さらに、高純度ニッケルは世界シェアの約20%という高さでした。

当時、ロシアはウクライナと戦争を始めた直後でした。主要生産国であるロシアが戦争を始めたわけですから、市場は今後のニッケル生産に不安を抱きます。つまり、供給が止まる前に出来るだけ多くのニッケルを買い占めようと動きます。実際に買い占めが起こり、価格高騰が起こりました。

このような急上昇が起きると、買い方は巨額の利益を上げることができます。これに対して売り方は巨額の損失を計上することになります。

相場の世界ではどちらに加担するか(全く加担しないか)は自由です。勝ち組に参加できれば大儲けですし、負け組に参加してしまえば大損です。これは相場の大原則です。

取引所としては、投資家が儲けようが損をしようが全く気にしません。自分たちには関係のないことだからです。

取引所が損をし始めると態度は一変する

取引所は自分たちの利益に影響が出始めると、態度が一変します。買い方のなかに現物の引き渡しを要求するものが大幅に増え始めたからです

まず、一般的な取引から説明しましょう。先物市場の取引の99%は差金決済です。具体的に言うと、買っても負けても売買の決済を現金で完結させるものです。ニッケル金属を欲しいとは言い出しません。

ところが、1%程度の顧客は現物の引き渡しを要求します。「本物のニッケル金属を渡してくれ」というわけです。商社やニッケル関連製造業がこれに該当します。

ここからが2022年に起きたことです。価格が大幅高騰すると、値段を吊り上げたい人たちは現物の要求を一斉に始めます。仮に現物の要求が3%(3倍)になってしまうと、取引所はそれを用意することができません。取引所は通常の量(だいたい1%)しか在庫を持っていないからです。

「現物を渡せないならば、その代わり、手数料をよこせ」と言って、投資家たちは裏取引を始めます。取引所としては、ルール通りに現物が渡せないので、仕方なしにそれに応じます。その手数料の額は交渉次第です。

相場があまりに高騰してしまったので、取引所は大きな損失を抱えることになったのです。それが2022年のニッケル相場でした。

では、どうするのか?取引そのものを無効化してしまえばいいのです。無効とは「初めからなかった」という意味です。

法廷が下した無念の「敗訴」

無効化の措置により、利益を奪われた投資家たちが、LMEを訴えました。正当な取引で得た利益の返還を求めました。

裁判の結果はどうなったのでしょうか。

「極端な価格変動による市場の崩壊を防ぐための非常措置は、規則で認められた合法なものである」と判断されました。つまり、投資家側が敗訴したのです。

取引所は国家の一部であり、裁判所も同じ立場です。簡単に言えば“ぐる”です。納得した投資家はいないでしょう。

取引所は、いざという時に既存のルールを覆す権限を持ちます。平時は公平な場所です。しかし、自分の利益がかかってくると、投資家の利益はないがしろにされます。

国家とはそのような存在だと思っていた方がいいです。財政が苦しくなってきたら、何でも平気でやりだす存在です。

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千葉テレビに出演しました。

べらんめぇ時事総論 第1回

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べらんめぇ時事総論 第2回

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べらんめぇ時事総論 第3回

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