第231回 政府370兆円投資の未来はバラ色か?

金庫は空っぽ、見栄えは満タン

政府が370兆円超の大型投資を行うと大々的に発表しました。この景気の良いニュースを聞いて、「日本もついに本気を出した!」と喜んでしまうのは危険です。政府の投資計画がいかにいい加減であるか、その実態をお話しします。

まずは、この370兆円という数字のカラクリです。図表1と図表2をご覧ください。

投資期間は2026年度から2040年度までの約15年間です。つまり、370兆円を15年で割ると、1年あたりの投資額は約24.6兆円になります。さらにズルいのは、これが官民合計だということです。民間企業(例えば日立など)が勝手に行う予定の設備投資の数字までかき集めて、見栄えを良くしているに過ぎません。

民間の投資額は各社が毎年行っているものですから、「日本の設備投資総額が今年はOO兆円になる」と発表しているのと全く同じです。

政府の投資額はGDPの押し上げ要因になります。しかし、財源は全く不透明です。政治の世界では消費税減税(食品1%)などの政策について、まず、その財源をどうするかが議論されている状態です。そもそも国にお金がないのですこうした状態で新規国債を発行すれば、金利が跳ね上がってしまいます

お役所ファンドは信用できない

一般的に言って、政府の投資は成功しないと考えるべきです。資金提供を受ける側に、「自分のお金ではない」という甘えがあるからです。しかも、役人は、「とにかく予算を配り切ればいい」という態度です。

本気度の感じられないお役所仕事の典型が、図表3のクールジャパン機構です

日本の魅力を世界へ発信するために設立され、計83件、2040億円もの投資を決定しました。しかし、現実には投資先の業績不振も響き、2024年度の累積赤字は383億円でした。2025年度には累積赤字が540億円に膨れ上がっています。

赤字を426億円以内に抑えるという当初の目標すら達成できない悲惨な状況です。経済産業省が廃止や他のファンドとの統廃合に向けた検討に入るという、大失敗の結末を迎えています。成功しない最大の理由はひとつ。何が儲かるプロジェクトかを見極めることのできる目利きがいないことです

役人は事業を興した経験がないですから、目利きのある人が政府内にいるはずはありません。同じ失敗が起きると考えるべきです。失敗だらけの投資計画によって、日本が成長路線を歩むと考えることはできません。

損切りできないゾンビ製造ファンド

さらに恐ろしいのが、一度始めた支援を途中でやめられないという政府特有の病です。図表4をご覧ください。

その象徴が、株式会社ジャパンディスプレイ(JDI)です。ソニー、東芝、日立の事業を統合し、2011年に合意、2012年に日の丸液晶メーカーとして鳴り物入りで設立されました。しかし、海外メーカーとの価格競争に敗れ、長年にわたり赤字を垂れ流しました。

民間企業であれば、即座に撤退(損切り)するような絶望的な状況です。それでも政府は「国策会社を潰すわけにはいかない」と、追加支援(追い貸し)を繰り返しました。2016年の750億円を皮切りに、2018年に200億円、2019年に1500億円規模と、巨額の資金を注ぎ込んだのです。これまでつぎ込んだお金を諦めきれません。責任問題になることを恐れて税金を投入し続ける、最悪のパターンです。

国策テーマには近づかない

市場の厳しい競争にさらされていない政府主導のプロジェクトは、ムダな経費を増大させます。そして責任逃れの延命治療を続け、最終的に国民の負担へと跳ね返ってきます。

これまで、どれほど景気の良い金額や成長戦略が発表されても、お役所仕事の事業が頓挫してきた実態を見てください。国策テーマに踊らされないことが大事です

有料の投資講座を始めました。ご興味のある方は次のURL「林則行の投資部ホームページ」をご覧ください。

【公式】投資部オフィシャルホームページ

千葉テレビに出演しました。

べらんめぇ時事総論 第1回

https://www.youtube.com/watch?v=jwM3lN1pclg

べらんめぇ時事総論 第2回

https://youtu.be/iIoA3NvRiIA?si=mgFcuwdSgC2Qp0y8

べらんめぇ時事総論 第3回

https://youtu.be/gb8Rf7OTvzY?si=GGMAVIbUuhEEHCZx

べらんめぇ時事総論 第4回

https://youtu.be/GeLXOBVb8es?si=QC304DUMq1ICjq5q

記事一覧へ戻る